■ 第6回こーえん・こーえん「月 面」 ■

 「月 面」「つきめん」ではありません。「げつめん」です。
    作 増田静  演出 田原雅之
    出演 松橋紘爾 比嘉奈巳子 田原雅之

   2000年7月27日(木)19:30/ 28日(金)19:30/ 29日(土)15:00・19:00/ 30日(日)15:00
    TheaterTEN(那覇大道バス停より3分 栄町リウボウすぐ・沖銀大道支店隣り)
    観劇料¥2000(学生¥1500当日券のみ)


   舞台美術 宮城麗(ステージオフィスばんく)/ 照明 稲嶺隆(沖縄舞台)/ 音響 犬養憲子(鼓)
    協力 アステル沖縄


「月面」公演レポート
受付嬢は見た。

舞 台 の 裏 側



大雨にもかかわらず大勢の方にご来場いただきました。
ありがとうございました。


私たちの不安は漠然としていた。
通常、本番までにすべきことを全てこなしていながら、どうしてもぬぐい去れない一抹の不安があった。
なぜならそれは、こけら落としだから。新しいホール。なにもかも初めて。一体どこでどんな目に遭うか、誰にも予測できない。
・・・・とっても、ふあーん。
だけど本番はやってきた。否応なく。
結論からいえば、普段の公演とそんなにかわらなかった、と思う。怪我人を出すことも、取り返しのつかない事故にあうこともなく、つつがなく楽日をむかえた。だけどやっぱり、ちょっとした事件は発生した。芝居は生ものだと、再認識させるような。
本番中なにかあれば、走るのはおおむね受付だ。でも今回は、音響さんまで走った。そんな「月面」公演中の、裏側のいくつかをここでは紹介しようと思う。客席からは見えない小さなお話。
 舞台は土の小山。


 役者で演出家で
 劇團管理人の
 田原雅之も働く。                 
 
初日は強風。翌日からは、それに大雨がくわわった。案の定、客足はちょっとにぶかった。
受付は悲惨だった。ホールのたたき?とういうか入り口が、ほとんど95%ぐらいおもてだったから。飛散して、悲惨。チケットやお札が飛び交い、回収しに走った。手伝いに来て戴いたアルテプランの酒井さんには、「これはなあ、ちょっとなあ」と渋い顔をされる。それで翌日から、開演の10分前まで会場内で受付することにした。
しかし飛散したのは、チケットとお金だけではなかった。
田原は、小道具である「ちらし」を風にさらわれた。開演10分前。「携帯電話の電源は切って下さい」の注意をした後、外の螺旋階段から上へあがろうと裏口の扉を開けた瞬間、そでの棚にしこんでおいた「ちらし」がぴゅーっとばかりに空高く舞い上がっていった。ちなみに、急ごしらえだったその棚も倒れた。手の届かない遠くへと舞っていく「ちらし」を、田原はしばらく口を開けて見守っていた(と推測する)。
結局、松橋が予備の「ちらし」を準備していたので、事なきはえた。でも本番前、というところが焦る。
 前日、ゲネプロ



 本番より緊張するのか。
 ちょっと台詞がとんだ。

               
TheaterTENは、ビルの3階と4階を吹き抜けにした、天井の高いホールだ。5階には喫茶店が入る予定だが、今回は間に合わなかった。若干の補修工事が残っていた。
本番中に工事されたら大変なので、田原が、工事は休んで下さいと申し立てていた。しかし、世の中には働き者がいる。
本番中、低く長く、地鳴りのようなごごごごごーという音が、ホールに響き渡った。受付、走る。
そこには、喫茶用に用意された大きく重いテーブルを、ひとり動かそうと引きずる業者の方がいた。説明して、慌ててやめてもらった。
それとは別に、音に関する不安はもうひとつあった。
喫茶のトイレを利用すると、ホールにまで、かすかに水の流れる音が聞こえる。ホールにはトイレがなく、喫茶のトイレを利用することになっていた。「もし聞こえたら、アレは川のせせらぎという効果音だということにしよう。」固く誓っていた我々だ。
ついでに、安里近辺の交通量は半端じゃない。本番中、ドップラー効果とともに救急車が度々走り抜けていったが、こればかりはどうしようもなかった。
 ストレッチの間も
 笑顔は忘れない。 



 ニコニコ教、松橋紘爾。
 女性客から、
 やたら笑顔を
 ほめられる。

3日目だったと思う。その日は、受付の助っ人に、役者の崎浜さんが来てくれていた。
遅れていらっしゃるお客様のために、開演後も受付は、外でしばらく待機しておく。ただ、崎浜さんはその日初めて「月面」を観るので、先に入ってもらった。ただし、入り口の近くに。会場係を兼ねてもらう。
崎浜さんは、受付用のテーブルを壁際に寄せ、その上で座って観ていた。
崎浜さんは、頭の後ろをなでたり、きょろきょろしたり落ちつかない様子だった。と、後から役者が話していた。舞台上から、崎浜さんの姿は手に取るように見えたのだ。なぜって、そこだけ客灯がついていたから。まるで、崎浜さんにサスがあたるかのように。
すーっと首だけ外に出して崎浜さんが言った。「なんか客席に灯りがついてるんだけど。」 
スタッフ席(4階)へ走り、照明の稲嶺さんにその旨を知らせる。しかしその灯りは、ホールで操作するものだということが判明。また走る。階段で、音響の犬養さんとすれ違った。上で操作できないものだったので慌てて駆け降りて来た、という話は後から聞いた。
ちなみに、その余計な灯りをつけたのは田原だった。終了後、自己申告していた。
 控え室は、
 上階のアパートを利用。 



 小道具に
 アイロンをかける
 比嘉奈巳子。
公演が終了し、田原はお客様に、こんな挨拶をしていた。
「ご覧の通り、(舞台と客席が)とっても近いです。ぼくたちはこれからもここで、こういう接近戦のお芝居をうっていくつもりです」
そんなわけで、TheaterTENとの戦いはまだまだ続く。接近戦ならではの面白さを提供できればと思う。今回のこの数々の教訓を生かしながら。
そこでは、きっとまた新たな教訓を見ることになるとは思うけれど。